JCHO九州病院循環器科後期研修プログラムの紹介
循環器科部長 毛利正博
1.当科の紹介
JCHO九州病院循環器科は、九州地区で最初に心臓カテーテル検査を実施して以来、県内でも高いアクティビティをもち地域の循環器診療や教育に取り組んでいる病院のひとつです。24時間態勢で、ほとんどすべての心臓・血管疾患(虚血性心疾患、心不全、不整脈、弁膜症、心筋疾患、心膜疾患などの心疾患、高血圧、胸部・腹部大動脈瘤や大動脈解離などの大動脈疾患、四肢や腎動脈、頚動脈など閉塞性動脈硬化症や深部静脈血栓症、肺塞栓症)に対して、診断、急性期治療、慢性期のリハビリまで一貫して対応しています。
- 当院は心臓カテーテル用血管造影装置を3台有し、24時間常に循環器緊急疾患に対応できる体制をとっています。集中治療室(ICU)に循環器疾患用として5床、循環器病棟(5階北病棟)に40床あり、急性心筋梗塞や重症心不全に対応しています。循環器科の年間の入院患者数は約1,300名、そのうち緊急入院が50%です。
- 冠動脈形成術はもちろんのこと、不整脈に対する心筋アブレーション治療、腎動脈/末梢動脈形成術、両室ペーシングなどほとんど全てのインターベンション治療を行っています。また大動脈ステントグラフト内挿術や心房中隔欠損閉鎖術も、それぞれ心臓外科、小児循環器科と協力して行なっています。
- 当院には心臓外科が併設されており、開心術を年間約300例おこなっています。待機的手術はもちろんのこと、内科治療が困難な重症多枝心筋梗塞、Stanford A型急性大動脈解離などの緊急手術が常時可能です。 救急症例や慢性期症例などひろく外科治療の適応を一緒にディスカッションしたり、あるいは実際の治療を目で見ることが出来ます。
- 循環器疾患の治療は急性期のみならず、慢性期の管理指導が大変重要です。私たちは日本で最も早く、30年以上前から心臓リハビリを治療に取り入れた病院のひとつです。本邦でも有数の心臓リハビリ施設とスタッフをそろえて、虚血性心疾患、心不全、心臓外科術後の患者さんの運動療法、教育を積極的におこなっています。九州で唯一の学会認定研修施設で、毎年、西日本、九州の医療施設から多くの見学者や研修者を受け入れています。
2.後期研修プログラム
循環器科の後期研修プログラムは卒業後3年目から2年間ないしは3年間におけるレジデントとしての専修過程です。循環器専門医を目指すにあたっては、内科全般にわたる診療経験や知識が必要で、後期研修の目的は単にカテーテルが上手になることではありません。裾野の広い循環器内科医としての素養や基礎的技術を身につけて、将来advanced cardiologyの研鑽を積むための準備期間であると思います。当院では、3年間のトレーニング期間の最初の1年目の間に、救急部、呼吸器、腎臓など内科系の他グループでも研修を行なうこと勧めています。
2年間の後期研修終了後に、大学院博士課程へ進学された方も過去大勢います。この場合、2年間循環器専門のトレーニングを受けていただくことになります。いずれにしても、できるだけ皆さんの希望に沿った研修を行なっていただきたいと思っています。以下に3年間の研修内容の一例を示します。
1年目
- 一般内科レジデントして救急、内科全般の専修を行う。循環器緊急疾患(急性心筋梗塞、急性心不全、重症の頻脈・徐脈性不整脈、大動脈解離等)の担当医として指導医と共に治療方針を決定・検証し、高いレベルで診療ができるようになる
- ICU、CCUでの呼吸・循環管理が出来るようになる
- 非観血的検査:経食道エコーを含めた心エコー、運動負荷心電図検査(RI検査を含む)などに関して基礎を修得
- 観血的検査:心臓カテーテル検査、冠動脈造影、電気生理検査は術者として施行
- 観血的治療:体外式ペースメーカー、IVCフィルター挿入を術者として施行
2年目
- 循環器疾患全般(特に急性冠症候群、心不全、不整脈)の治療、コントロールができるようになる。心臓リハビリテーション、栄養管理(NST、栄養サポートチーム)などを介して急性期から慢性期にかけての全身的管理を学習する
- カテーテルインターベンションや心筋焼灼術の助手、術者としてのトレーニング
3年目
- 上記のトレーニングの継続と技術の習熟
- 急性心筋梗塞における冠動脈インターベンション治療の術者として研修
3.当科における研修の目標
後期研修を考えている皆さんに是非知っていただきたいことがいくつかあります。循環器専門医になる場合、内科全般がわかっているということがきわめて重要です。循環器内科学は内科のどの専門科よりも、他の分野の幅広い知識が必要です。糖尿病、腎臓病、呼吸器などについても、診断や治療方針の方向付けがある程度できるようにならないといけません。カテーテルだけしか興味のない方はむしろもっと多くの症例を経験できる病院での研修を考えてください。現在の循環器内科学において低侵襲カテーテルインターベンションが大切であることは言うまでもありませんが、それと同じくらい亜急性期から慢性期にかけての包括的なケア(栄養、運動、教育など)が重要です。救急疾患の救命から維持期における診療プログラムまで、幅広く積極的に学んでほしいと思います。
4.各学会認定施設
日本循環器学会認定循環器専門医研修施設、日本内科学会認定医制度教育病院、日本心血管インターベンション治療学会認定研修施設、日本心臓リハビリテーション学会認定研修施設、日本不整脈学会・日本心電学会認定不整脈専門医研修施設、日本高血圧学会専門医認定施設、日本救急医学会認定救急科専門医指定施設