診療の特徴や詳細情報(血液・腫瘍内科)

診療・各部門

血液内科の紹介

はじめに

血液内科は、貧血、血小板減少などの造血異常や白血病や悪性リンパ腫などの造血器悪性腫瘍の診断や治療を担当しています。診断は血液検査や骨髄検査などの検体検査、CT検査やPET/CT検査などの画像診断を用いて集学的に行うことで正確な診断を下し、ガイドライン等を参考に化学療法、免疫抑制療法、造血幹細胞移植などを適切に選択して、造血器疾患の治療を行います。

施設の特徴

4人の血液専門医(日本血液学会専門医4名、日本造血細胞移植学会専門医3名)が、専門性を持って外来・病棟で昼夜を問わず血液造血器疾患の診断・治療に当たっています。血液病棟には、クリーンルーム(空気清浄度クラス100以下2室、空気清浄度クラス10,000以下13 床)を完備し、新患や急患の受け入れに応えられるような受診体制を常に整えています。造血幹細胞移植は2009年10月から骨髄移植推進財団,2011年2月から臍帯血の移植施設に認定されており、最近症例数の増えているハプロ移植を含めてあらゆる種類の造血幹細胞移植に対応できます。病棟での診療は、認定造血細胞移植コーディネーター(認定HCTC)看護師、薬剤師、OT、PT、栄養士、心理療法士、検査技師などの多職種によるチーム医療として行い、血液キャンサーボードも週1回開催しています。
また、初期及び後期研修医(レジデント)は化学療法や移植治療に参加し、学会や研究会に成果を報告します。大学と連携して全国規模の多施設共同臨床研究や新規薬剤を用いた臨床治験にも積極的に参加しています。

疾患の特徴

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2021年に当院で診断した疾患の割合です。悪性リンパ腫が全体の約1/3と最も多く、次いで急性骨髄性白血病や骨髄異形成症候群を含む骨髄系腫瘍でした。また、多発性骨髄腫などの形質細胞腫瘍は自家末梢血幹細胞移植や多くの新規治療薬を組み合わせた治療が効果的で予後が改善しています。

対応可能な治療

血液内科の検査

貧血や血小板減少、白血球増多などの原因を調べるため、血液検査や骨髄検査(穿刺や生検)を行います。骨髄検査は局所麻酔を用いて行いますが、侵襲は少なく安全な検査です。

悪性リンパ腫の多くは、リンパ節生検で診断します。耳鼻科や外科に依頼し、病理科で診断されます。

また、正確に診断し分子標的薬で効率的に治療するため染色体検査や細胞表面マーカー(フローサイトメーターによる表面形質)検査、遺伝子の検査などを行います。当院では、JAKやCALRなどの遺伝子異常は院内で迅速に検査可能です。

血液内科の治療

白血病や悪性リンパ腫などの造血器悪性腫瘍は、化学療法(薬物療法)のみで治癒が期待できましたが、最近は分子標的薬の併用でさらに予後は改善しています。造血器悪性腫瘍は他の悪性腫瘍に比べて大量の抗がん剤を投与して治療することが多く、高度の骨髄抑制(貧血や白血球・血小板が減少すること)をきたした場合は、クリーンルームに入室します。また、高リスクの染色体異常を有し化学療法のみでは不良な予後が予想される白血病などでは、骨髄移植などの造血幹細胞移植の適応を検討します。

高齢者や大量化学療法に適さない場合は、化学療法剤を減量したりより軽度の副作用が期待される分子標的薬や新規治療薬などを選択することで、生存期間の延長や病勢のコントロールを目標とする治療戦略を検討します。

当院における移植症例数の年次推移 (人)

移植ソースの種類:
(1)自家末梢血幹細胞移植
(2) 同種造血幹細胞移植:
2-1 血縁
2-2 非血縁(骨髄バンク)
2-3 臍帯血

当院では、すべてのタイプの移植を、患者さんの状態に応じて適切に選択しております。
5年前よりは、親子間でも従妹間でも可能な半合致移植(ハプロ移植)も行っています。

▼当院の移植成績
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▼疾患別の造血幹細胞移植成績

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● 支持療法,理学療法,口腔ケア

(1) 日和見感染・・・疾患や治療による免疫力低下に対して、予防的な支持薬の投与と共に迅速な対応を行っています。

(2) 輸血療法 ・・・赤血球・血小板・新鮮凍結血漿などの成分輸血を患者さんの病態に応じて行っております。

(3) がんに伴う疼痛,その他の症状の緩和・・・WHOの疼痛ラダーを参考にして、緩和ケアチームの協力のもと疼痛管理を行っています。病状説明では患者さんの心情への配慮に努めています。

(4) 理学療法・・・治療期間中は、身体能力維持や向上をめざし、可能な限り早急にリハビリを開始します。クリーンルームエリアには運動器具も設置しています。

(5) 口腔ケア・・・歯科医 (非常勤)が週に1回の口腔ケアの回診を行い、歯科衛生士が毎日のケアを行っています。歯科医の介入により口腔内合併症に加え、発熱、感染症の発症も抑えられています。

(6) 移植後長期フォローアップ外来・・・認定HCTCが主体となり同種幹細胞移植に伴う慢性移植片対宿主病による症状を中心とした様々な問題に対処するよう、尽力しております。

このような時にご相談・ご紹介下さい

赤血球の異常(貧血,多血症)、白血球の異常(白血球減少・増多症、末梢血の芽球など異常細胞の出現)、血小板の異常(血小板減少・増多症、出血傾向)など検査異常を指摘された場合は、受診をご相談ください。特に 2 系統以上の血球異常は骨髄異形成症候群や再生不良性貧血など血液疾患の可能性があります。リンパ節が腫脹し生検で悪性リンパ腫と診断された場合、圧迫骨折を繰り返し貧血や腎機能障害を伴う場合(多発性骨髄腫が疑われる)は、データを準備して受診をご相談ください。

また、化学療法後に造血幹細胞移植治療を希望される場合や移植後のフォローアップを希望される場合も、ご連絡ください。

診療科の特徴

外来化学療法

 日常生活を送りながら、あるいは仕事をしていただきながら,通院で化学療法を行う"外来化学療法"を行う方も増加しています。疾患や治療法によりますが、比較的若年の方に適しています。ご高齢の患者さんは合併症や通院の困難さから入院での治療を希望される方が多い傾向にあります。

高齢化社会での血液内科

 当科を受診される患者さんは北九州二次医療圏の特徴を反映して高齢者の割合が高くなっております。高齢者は脆弱性があり、合併症も多いという特徴があり化学療法の実施には困難さを伴いますが、当科ではこれまでの経験を活かして化学療法の減量や投与間隔の延長を行うことで予後の延長やQOLの改善が期待できる場合は化学療法を提案し、積極的に治療を行うことを目標としています。

チーム医療

 働き方改革の方針に従い、当科でもチーム医療体制を導入しつつあります。特に、病棟入院中は複数の医師による複数担当医のチームで診察、病状説明、回診を行います。チームの医師はカンファレンスなどを通じて医療情報を共有し、レベルの均霑化を図っています。

最後に

北九州の西部地区およびその周辺地域において最も質の高い、充実した血液内科診療を提供できる診療科を目指しています。血液疾患が疑われる場合は、ご相談ください。

腫瘍内科の紹介

わたしたち腫瘍内科は、がんの薬物療法を専門としており、様々な悪性腫瘍(がん)に対する「抗がん剤治療を担当」しています。わたしたちの目標は、「相談できる内科医」です。患者さんの視点に立ち、その方の生活スタイルに合わせた治療を提供したいと考えています。また、がん患者さんの「痛みを取り除くための緩和治療」や、「抗がん剤の副作用を軽減する支持療法」も同時に提供できるように努めています。さらに、新規治療法や新薬の開発、未来の治療を担う若手医師の教育にも力を入れています。
がん診療連携拠点病院として地域のがん患者さんの治療を行い、同時に日本のがん医療の発展に貢献していきたいと考えています。

対応可能な治療

主な診療内容

腫瘍内科で担当している腫瘍

頻度の高い順に、「大腸がん」「胃がん」「食道がん」「胆道がん」「膵がん」「乳がん」などの薬物療法を担当しています。比較的患者さんの数が少ないとされる「原発不明がん」「小腸がん」「肛門がん」「軟部肉腫」「性腺外胚細胞腫瘍」などの治療も対応可能です。

標準治療の提供

日本または世界で推奨されている最善の抗がん剤治療を実践しています。副作用を軽減する支持療法や、がんによる苦痛を取り除く緩和治療も同時に提供しています。

外来での抗がん剤治療

初回の治療は入院で行う場合が多いですが、それ以降は日常生活を送っていただきながら、外来通院での治療が目標です。中には仕事を続けながら治療を受けていただく患者さんもいらっしゃいます。外来化学療法室のページはこちら

外科治療や放射線治療との連携

がんは一筋縄ではいかない病気です。そのため必要な場合には、他の専門領域の医師と共同してチーム医療を提供しています。その他、薬剤師・看護師なども一丸となって患者さんの治療や副作用対策などのサポートに携わっています。

腫瘍内科のセカンドオピニオン

がんの薬物療法に関して(当科担当の腫瘍に限る)、情報を求めている、治療に対し不安に思っている、副作用で困っている、などがあれば対応いたします。まずはセカンドオピニオン外来へお問い合わせ下さい。セカンドオピニオン外来のページはこちら

診療実績

2020年の実績

2020年に腫瘍内科で新規に診療が行われた一覧は下記になります(再来は除く)。

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診療科の特徴

新しい治療法の臨床試験や、新しい治療薬の治験について

腫瘍内科では、がんでお悩みの患者さんや、がん医療の発展に貢献するべく、新しい治療開発にも力を注いでおります。ご参加いただける方や、詳細をお知りになりたい方は、お気軽に腫瘍内科外来までお問い合わせ下さい。

腫瘍内科を目指す若手医師の先生へ

腫瘍内科では後期研修医(レジデント・フェロー)を募集しております。JCHO九州病院は「日本臨床腫瘍学会」の「認定研修施設」であり、多数の「がん薬物療法専門医」が常勤する数少ない病院の一つです。がん薬物療法専門医を目指す先生や、がん薬物療法の習熟を希望される先生には最適な病院です。興味をお持ちの先生は、ぜひ腫瘍内科医師までお問い合わせ下さい。腫瘍内科での後期研修についてのページはこちら

最後に

腫瘍内科を受診される患者さんは、様々な理由でがんの薬物療法を受けていらっしゃいます。治療には良い面もありますが、人によっては副作用などでつらい思いをされる方もいらっしゃいます。わたしたちの一番の目標は、治療を受けていただく皆さんが「これまでの日常生活を、これからも変わらずに送っていただくこと」です。そのためにわたしたちができること、すなわち治療を受けられる皆さんの「サポート役」として、そばに寄り添わせていただきたいと願っています。

血液・腫瘍内科のトピックス

当院血液・腫瘍内科最近のトピックスです。以下の項目をクリックしてご覧ください。