呼吸器外科

診療・各部門

呼吸器外科の紹介

「呼吸器外科部門」では、肺癌(原発性、転移性)をはじめとして、縦隔腫瘍・気胸・炎症性肺疾患・胸膜疾患・重症筋無力症など、肺・縦隔疾患の外科治療を行っています。

当院呼吸器外科の体制

当院の呼吸器外科は、呼吸器外科専門医9名(生田安司、中村勝也)を中心に、外科後期修練医1名を加え、呼吸器内科、放射線科、病理診断科と連携を密にしたグループ診療体制をとっています。

呼吸器外科疾患の患者さんについて、呼吸器部門合同カンファレンス(毎週火曜日)、および呼吸器外科病棟カンファレンス(毎週木曜日)を行い、症例に応じて複数の科で検討しながら治療方針を決めるようにしています。すべての呼吸器外科疾患の患者さんは、呼吸器外科専門医が主体となり担当し、手術および術後管理を行います。病棟は、主に6階南病棟です。

肺癌の治療方針決定には、病期(ステージ)診断、組織型診断が重要です。このため、治療前にCT、気管支鏡検査、脳MRI、PET、肺機能検査、などが必要になります。その結果、手術が最適な治療法と判断された場合(主にステージⅠ、Ⅱ、およびⅢ期の一部)に、外科で手術を受けることになります。手術の方針が決まったのち、外来で日程、手術内容などの説明があります。標準的な肺癌手術の場合、手術の1-3日前に入院していただき、手術後7日目頃に退院となることが平均的です。最近の肺がん患者さんの平均入院期間は8日程度です。

診療実績

<2023年の呼吸器外科手術のまとめ>
  • 手術例数が163例(原発性肺癌92例)でした。
  • すべての手術に胸腔鏡を用いました。
  • 原発性肺癌の内訳は、葉切除66例、部分切除25例でした。
  • 原発性肺がん手術における術後合併症発生率は、12.0%でした。術死や術後在院死はありませんでした。

近年の手術例数の推移

  2021年 2022年 2023年
原発性肺癌 81 75 92
転移性肺癌 10 5 11
縦隔腫瘍 8 5 7
気胸・血気胸 24 19 25
炎症性肺疾患 4 5 3
膿胸 9 3 10
重症筋無力症 0 0 1
胸膜腫瘍 1 2 2
その他 18 23 13
 合       計 155 137 163

最近3年間の術式別手術例数

  2021年 2022年 2023年
肺切除 84 104 91
  葉切除 61 51 66
  二葉切除 2 4 0
  肺摘除 1 0 0
  区域切除 1 0 0
  部分切除 19 49 25
縦隔腫瘍切除 8 5 5
胸腺摘出 0 0 0
胸膜肺全摘 0 0 0
肺剥皮、胸郭形成 0 0 0
その他 63 28 63
 合      計 155 137 163
<当院呼吸器外科の手術について>
  • 呼吸器外科専門医が担当し、執刀あるいは指導します。
  • 全例に胸腔鏡を用いています。
  • 肺がんの主要な手術(葉切除、区域切除、肺摘除など)では、原則として、胸腔鏡下手術を行っています。しかし、腫瘍の大きさや進行度などによって開胸手術となることもあります。
  • ソフト凝固モードのある電気メス装置を用い、出血の少ない、より安全性の高い手術を行っています。
  • 嚥下リハビリチームと協力し、手術後の誤嚥防止対策を行っています。
  • 未確診の早期肺がん症例においては、術中迅速病理診断に基づき、切除範囲を決定しています。

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写真1 胸腔鏡化手術における創

最近3年間の原発性肺がんの病理病期別手術例数

病理病期 2021年(第8版) 2022年(第8版) 2023年(第8版)
0~ⅠA 33(52.4%) 48(64.0%) 39 (44.8%)
ⅠB 14(22.2%) 10(13.3%) 16(18.4%)
ⅡA 2(3.2%) 1(1.3%) 5(5.7%)
ⅡB 7(9.0%) 9(12.0%) 13(14.9%)
ⅢA 7(9.0%) 3(4.0%) 9(10.3%)
ⅢB 0 3(4.0%) 0
0 1(1.3%) 3(3.4%)
<肺がんに対する縮小手術について>

スリガラス陰影を主体とした早期の肺がんや、低肺機能の患者さんなどでは、通常の肺葉切除以下の縮小手術(区域切除、楔状切除)を適用しています。2023年は、原発性肺がん92例中、25例の患者さんに縮小手術を行っています。

<肺がんに対する低侵襲手術(単孔式胸腔鏡手術について>

単孔式胸腔鏡手術は、約4㎝長の傷一つでおこなう手術手技であるため、整容性に優れ痛みも少ないという患者様にとってわかり易い利益が期待できる手術手技であり、当院でも2023年1月より開始いたしました。これまで当院でおこなってきた胸腔鏡手術(多孔式)と比較し難易度はあがりますが、がんの根治性や手術の安全性はこれまでと変えることなくこれまで施行しています。

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写真2 胸腔鏡下肺癌手術におけるソフト凝固の使用

<進行肺癌に対する手術>

局所進行肺癌では、その手術適応は基本的に肺癌診療ガイドラインに基づいて、呼吸器カンファレンスで決定し、必要に応じて術前治療(化学放射線療法)を行うようにしています。周囲臓器浸潤例では、N0またはN1(肺門リンパ節転移)症例であれば、合併切除(胸壁や大血管)、あるいは心嚢内血管処理などを行い、完全切除を行うようにしています。

原発性肺癌切除929例(2003-2016年)の生存曲線

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原発性肺癌切除例5年生存率(2003-2011年、506例)kokyuki5nenseizon

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<縦隔腫瘍手術について>
  • 過去13年間に、123例の縦隔腫瘍手術を行い、うち69例は胸腔鏡下手術です。
  • 腫瘍の大きさ、局在、周囲浸潤の状況などを考慮して、胸腔鏡下手術の適応を決めています。
<気胸手術について>
  • 完全胸腔鏡下手術が基本です。
  • 2023年の気胸手術は、19例でした。

診療科の特徴

<呼吸器外科外来について>

金曜日 生田(新患)
火曜日 中村(新患)
再来の患者さんは、火、木、金に診察しています。

患者さんのこと、受診などでご不明の点があれば、外科の生田または中村までご連絡ください。病院代表電話(092-641-5111)から直接つながります。

今後も、根治性、安全性、低侵襲性のバランスをとりながら、呼吸器外科疾患の患者さん一人ひとりに、適切に対応してまいります。

また、2013年から肺がん地域連携パスを積極的に適用しています。対象は主にステージⅠの原発性肺がん術後の患者さんで、2020年3月の時点で、158名の患者さんに運用させていただいています。よりスムーズな連携ができるよう、かかりつけの先生方や医療支援部とも協力しながらパスの運用を進めていきたいと考えています。

(文責 生田 安司)

医師の外来スケジュール

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スタッフの紹介

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呼吸器外科のトピックス

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(最終更新日:2023年3月24日)