診療・各部門
- 診療体制
- 外来診療
- 不整脈外来
- 高血圧外来
- 入院患者数
- 疾患内訳、短期予後
- 急性冠症候群
- 冠動脈インターベンション(PCI)
- 心不全
- IMPELLA
- 構造的心疾患(Structural heart disease)
- 不整脈/失神
- 不整脈植え込みデバイス各論
- 不整脈植え込みデバイス実績
- 先天性心疾患
- 循環器科の後期研修を希望される皆さんへ
- 循環器科業績(2014年以降)(実績データはこちら)
- 循環器科のトピックス
診療体制
2025年度は宮田 健二、菊池 幹、川村 奈津美、百名 洋平、前原 絵理、有村 貴博、加耒 秀隆、藤原 礼宜、梅本 真太郎、川原 卓郎、山本航の11人体制で、外来および入院診療、心臓カテーテル検査、当直宅直業務を行なっています。
循環器内科レジデント、筬島 光、大谷哲平が入院患者を受け持ち、スタッフの指導のもとで心臓カテーテル検査をはじめとする循環器疾患の診断・治療のトレーニングを行っています。また初期研修医がローテーションで、入院患者さんの担当医として循環器内科学の基礎臨床研修を行っています。
外来診療
外来は毎日2~3名の循環器内科医が診療を行っています。新患は基本的には医療連携室を通しての予約制です。急患については総合受付 (093-641-5111) に電話していただければ、循環器の急患担当医に直接つながりますので予約は不要です (平日診療時間内)。夜間や土日祝祭日については救急外来担当医が対応し、24時間体制で専門医へ連絡いたします。
2024年の新患患者は1,120名(前年1,086名)、再来患者はのべ11,462名(前年9,458名)でした。ご紹介いただいた患者さんはもちろんのこと、これまでかかりつけ医のない初診の患者さんも、当院での診療後は原則としてすべて開業医の先生もしくは近隣病院の先生のもとへ紹介しています。
不整脈外来
月曜日から金曜日まで、外来担当医が対応いたします。また、不整脈学会専門医の菊池が水曜日・木曜日の担当です。簡単な病歴と心電図1枚で結構ですので、予約の際に「不整脈外来希望」とお伝え下さい。動悸の診察、期外収縮、心房細動などの診断や治療方針のご相談にご活用ください。その他の医師への紹介ももちろん可能です。
高血圧外来
月曜日から金曜日まで、外来担当医が対応いたします。主に二次性高血圧鑑別や治療抵抗性高血圧の検査治療にあたっています。そのほか高血圧による末梢臓器障害の評価や栄養指導など教育の強化などにも取り組んでいます。画像検査やホルモン検査のほか、症例にあわせて24時間血圧測定、睡眠時無呼吸検査、自律神経機能評価なども行ないます。評価終了後の治療については、紹介いただいた先生にお願いしています。
入院患者数
2024年の入院患者数は1,446(前年比+125)名で、過去最多数を更新しました。約45%の704名 が急患入院で、在院日数の平均は11.7(前年比+0.2)日、中央値 [IQR] は8 [4, 16] 日でした。
疾患内訳、短期予後
虚血性心疾患(32%)、心不全/弁膜症(24%)、不整脈/失神(24%)の順に多く、これら三大疾患が全体の80%を占めました。近年は、不整脈症例の割合が増加しています。
入院されてきた患者さんの82%(1,290名)は自宅へ退院され、188名(全入院症例の12%)がリハビリや治療継続のため他院へ転院されています。毎年多職種カンファレンスにより意思決定支援、ACP(advance care planning)を確認し、退院設定を行なっています。
緊急/準緊急手術目的で心臓外科に転科された方は20名(前年比-7)でした。心血管死、非心臓死はそれぞれ29名、26名で、全入院患者数に対する死亡率はそれぞれ1.8(前年比+0.2)%、1.6(前年比-0.3)%でした。


急性冠症候群(ACS)
急性心筋梗塞(AMI)、不安定狭心症、虚血性心肺停止を総称したACSは循環器緊急疾患の中で、もっとも迅速かつ的確な診断と治療が要求される疾患です。2024年には141名(前年比-5)の入院がありました。このうちST上昇型心筋梗塞(STEMI)は83名(前年比-11)でした。141名(100%)の方に冠動脈造影を、127名の方にカテーテル治療を施行しました。左主幹部病変が8.6%、三枝病変が29.9%を占め、高齢化に伴う複雑病変による発症が増えています。待機的もしくは緊急バイパス手術も7名に施行しました。来院時心肺停止を除いた死亡は5名(死亡率3.5%)で、全てSTEMI症例でした。今後も良い成績が続くように、カテーテル検査/治療を24時間体制で行い、地域の循環器救急医療に貢献していきます。
冠動脈インターベンション(PCI)
1年間で422件のPCIを施行しました。COVID-19による入院制限がありながら、10年連続400件を達成しました。また、開設から通算10,000件に到達しました。当院の特徴は、急患患者が多いため緊急PCIの割合が全国平均より高いことです(126件、全PCIの32%)。休日夜間の場合はCCU当直医に加えて、2名の医師が登院して緊急PCIを行っています。高齢化のため、左主幹部病変や三枝病変への緊急PCIが必要となっています。また、石灰化複雑病変に対しては、Rotablator、Diamondback360、Shockwave C2といった特殊治療を必要に応じ行っています。


心不全
1年間の入院は、急性・慢性を合わせ389(前年比+41)名でした。心不全の基礎疾患としては、弁膜症 (主として非リウマチ性AS、AR、MR)、亜急性/陳旧性心筋梗塞、不整脈・電動障害、高血圧性心疾患が四大原因です。患者さんの年齢の中央値は82歳で、3分の1が85歳以上でした。在院日数の中央値は14日で昨年と同様でしたが、4週間以上の入院が必要であった割合は17%と、年々低下しています。心不全手順書の作成やアドバンス・ケア・プランニングの多職種勉強会や緩和ケアチームと協力したオピオイドを含む症状緩和の経験も増え、在院日数は年々短縮傾向です。自宅退院は71% (前年72%)、転院による治療継続が必要な方は22% (前年18%) でした。院内死亡率は3.3%(前年3.4%)でした。
IMPELLA
IMPELLAは、心原性ショック等の薬物療法抵抗性の急性心不全に対して使用される、補助循環用ポンプカテーテルです。左室内に留置し、左室の血液を汲み出し大動脈から全身に拍出する補助循環装置(VAD)と同等の機能を持つ流量補助装置であり、心負荷軽減と心筋循環改善による心機能改善効果が期待されます。また、カテーテルVADであるため、ショック時の対応が迅速で、かつ低侵襲に装着可能です。施設認定を取得し、2024年3月26日に第一例目を施行しました。
構造的心疾患(Structural heart disease)
経カテーテル大動脈弁留置術(TAVI)
当院では2020年5月11日より大動脈弁狭窄症(AS)に対するTAVIを開始し、2024年12月までに103例実施してきました。
平均年齢85歳で、より低侵襲である経大腿TAVI 96例の術後在院日数(中央値)は8.9日、周術期(30日)死亡0%と短期成績は極めて良好でした。手術適応、周術期のリスク評価に加え、術前・術後のTAVIハートチーム(循環器内科・心臓外科・麻酔科・看護師・臨床工学士、放射線技師・生理検査技師・理学療法士等)カンファレンスによる情報共有の結果であり、今後も最良の医療を提供していきます。心雑音が気になる患者さんや、心エコーで大動脈弁の石灰化を認める患者さんを、お気軽にご紹介ください。
経カテーテル左心耳閉鎖デバイス(WATCHMAN)
2024年4月より経皮的左心耳閉鎖術を当院で開始しています。塞栓症をきたす心房細動に対する抗凝固療法はアブレーション治療と並ぶ標準治療でありますが、一方で出血リスクを増加させます。一般に心房細動で形成される血栓の90%以上が左房の中の『左心耳』という袋状の部位に生じるとされており、左心耳閉鎖を行うことで抗凝固療法の中止が可能となります。消化管出血や脳出血の減少、脳梗塞をきたした場合でも症状が軽度であるとの報告があり、生命予後を改善する治療です。
不整脈/失神
JCHO九州病院での不整脈に対するカテーテルアブレーションは、前身である九州厚生年金病院時代の1992年1月に第1症例目が行われました。以降症例を積み重ね、2006年度からは心房細動に対するカテーテルアブレーションも開始致しました。器材の進歩により治療成績も年々向上し、発作性、持続性においては8割5分―9割程度の成功率が得られるようになってきました。2024年度にはマッピングシステムが最新のEnSite Xに更新され、2025年1月からは最新・最先端技術のパルスフィールドアブレーションを導入致しました。
パルスフィールドアブレーションとは、心筋細胞に特異的な周波数のパルス電圧を用いて心筋細胞膜に微小な穴を開け、心筋細胞の細胞死を引き起こすことで不整脈を治療します。熱を用いず心筋細胞に特異的にダメージを与える治療法のため理論上心臓周囲の臓器への影響がなく、合併症の発生リスクが低減することが期待されています。そのため、リスクが高いと考えられる高齢者や他疾患合併患者でも心房細動を含む不整脈で苦しんでおられる場合はカテーテルアブレーションを行っており、順調に経過しています。
先生方のご支援のおかげで症例数は年々増加しており、2024年度は212症例のカテーテルアブレーションを行うことが出来ました。患者さんを不整脈の苦しみから解放できるように今後もますます精進していきたいと思います。今後とも何卒ご支援くださいますようよろしくお願い申し上げます。

不整脈植え込みデバイス各論
不整脈植え込みデバイス(ペースメーカ・植え込み型除細動器・両室ペースメーカ・植込み型心電計等)の管理は、デバイスチーム(不整脈専門医、臨床工学技士および看護師からなるチーム)で行っており、基本的な機器管理に関しては院内スタッフのみで完結できる体制が整っています。新規植え込み症例は、全てのデバイスで条件付きMRI対応型および遠隔モニタリング対応となっており、遠隔モニタリングに関しては臨床工学技士が中心となって管理を行っております。
1. ペースメーカ(PM)
ジェネレータ(本体)交換症例に関しては、使用中の古いペーシングリードの製品によってはジェネレータ交換後に条件付きMRI対応となる場合があります。リードレスPMの植込みも行っておりますが、基本的な機能については従来の経静脈リードを用いたPMの方が優れているため、慎重に適応症例を選んでおります。PMは製造メーカーにより付加機能が異なっており、適応疾患、日常生活動作などを考慮して症例毎に適した機種を選定しております。
2. 植え込み型除細動器(Implantable Cardioverter Defibrillator, ICD)
ペーシング機能が不要な症例に対しては、皮下植込み型除細動器(S-ICD)の植込みも行っております。ICDも機種によって特性があり、患者さんに適していると考えられる機種を選定しております。
3. 両室ペースメーカ(心臓再同期療法; Cardiac Resynchronization Therapy, CRT)
低左心機能の慢性心不全症例について、心機能改善を目的として植込みを行っています。致死性不整脈を合併した症例に対してはICDを持ち合わせたCRT-Dを、致死性不整脈を合併していない症例に対してはCRT-Pを植込んでおります。左心室リードについては機能に優れた4極リード型を使用しておりましたが、2020年4月よりサイドへリックスを備えた4極リード(Attain StabilityTM Quad, Medtronic社)が市販され、従来よりも理想的な位置に高い安定性を持って留置出来ることが期待されています。
4. 植え込み型心臓モニタ(Insertable Cardiac Monitor, ICM)
植込み型ループレコーダ(ILR)と呼ばれていたものです。現在2社から市販されておりますが、いずれも小型であり、外来での植込みも可能となっております。遠隔モニタリング機能により、不整脈の診断後速やかに治療(PM、ICD、カテーテルアブレーションなど)を行うことが可能で、イベント心電計でも診断のつかない失神症例に対して非常に優れた診断能を発揮します。また、心房細動を検出するための潜因性脳梗塞患者への使用も適応となっておりますので、お困りの症例がございましたらお気軽にご紹介下さい。
5. MRI撮影
条件付きMRI対応デバイスを植込まれた症例のMRI撮影については、MRIモードに設定変更の上でデバイス担当医師、臨床工学技士の立ち合いの元撮影を行っております。このため、現時点では原則木曜日午後の固定枠での撮影となっております。MRI撮影のみの依頼については、放射線科へ依頼をお願い致します。
6 刺激伝導系ペーシング(Conduction System Pacing, CSP)
2024年に添付文書が改訂され、一部製造メーカーのリードでCSPの一種である左脚領域ペーシング(LBBAP)が明記されました.従来のスタイレットを用いたリード留置と比較して心室同期性が期待されるため、積極的にLBBAPを行っていきたいと考えております。
不整脈植え込みデバイス実績
2024年:ペースメーカ:139例(交換48例)、ICD:11例(交換4例、S-ICD1)、CRT-P/CRT-D:8例(交換/upgrade 3例)、ICM:4例(交換1例)、遠隔機断線に伴うリード交換 1例
先天性心疾患
先天性心疾患とは、生まれつき心臓の構造や機能に異常をきたしてる病気です。心臓血管外科治療が行われるようになる以前は、先天性心疾患をもつ患者さんが成人になる割合は、50%に満たない状態でした。1938年に動脈管開存症に対する閉鎖術、1953年に人工心肺使用下での心房中隔欠損症の開心術が行われ、その後、徐々に日本でも先天性心疾患の手術が行われるようになりました。以降、外科治療の発達や内科管理の技術向上により、先天性心疾患患者さんの多くが成人を迎えるようになっており、生活習慣病など成人期特有の問題も抱えるようになっています。
当院でも、1960年から先天性心疾患に対する手術を行っており、当院で手術を受け、現在も外来に通院されている患者さんの中には50歳台の方も多くいらっしゃいます。
加齢に伴い生活習慣病など成人期特有の問題も抱えるようになることも多く、小児循環器から成人の循環器内科への移行が勧められています。また、成人期に発見された心房中隔欠損症や動脈開存症に対する治療も小児循環器科と合同で行っています。
循環器科の後期研修を希望される皆さんへ
当院循環器科の後期研修のご案内は、循環器内科後期研修プログラムのページをご覧ください。
循環器科業績(2014年以降)
当院循環器科の2014年以降の業績は、循環器内科業績(2014年以降)のページをご覧ください。
循環器科のトピックス
当院循環器科最近のトピックスです。以下の項目をクリックしてご覧ください。
- 経カテーテル左心耳閉鎖術 「WATCHMAN」(2024年9月)
- 院内迅速対応システム導入について「Rapid Response System」(2023年2月)
- TAVI Project(2020年12月)
- 心原性ショックの現状と課題(2017年9月)
- 長寿社会と循環器救急疾患(2015年6月)
- 院外心肺停止患者さんの治療-神経学的予後改善のための低体温療法-(2012年9月)
- SVC症候群のステント治療(2012年5月)
- 大動脈弁狭窄症とイノウエバルーンによる大動脈弁拡張術(2012年4月)
- 不整脈に対するアブレーション治療の現状(2012年2月)
- 血管インターベンション(2012年1月)
- 抗血栓薬を服用されている患者さんの診療について(2011年5月)