上部消化管外科の紹介

診療・各部門

上部消化管外科の紹介

上部消化管グループでは胃癌や食道癌の手術を担当しています。

胃癌治療の現況

胃癌は死亡率の高い悪性疾患ですが、近年は検診や消化管内視鏡検査による早期発見で治癒できるようになりました。胃癌の治療は病変の切除が第1選択であり、その方法としては内視鏡切除と手術の2通りの方法があります。リンパ節転移の可能性が低い早期胃癌に対しては内視鏡切除が、それ以外の進行した胃癌には手術が必要になります(図1)。当院は日本胃癌学会の認定施設Aであり、質の高い診療を心掛けています。

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図1:胃癌に対する進行度別治療法の適応(胃癌治療ガイドライン2021年版、赤枠は手術の適応)

胃癌に対する手術治療

手術の方法は、開腹手術と腹腔鏡下手術、ロボット手術の3通りがあります。かつては開腹手術による切除が唯一の方法でありましたが、近年はそれに加えて腹腔鏡による低侵襲の治療法が行われるようになっています。具体的には、腹壁の1cm程の小さな傷(図2)からカメラを入れて、テレビモニターに映して観察しながら、専用の細い器具を使用して胃の切除を行います。従来の開腹手術と比べて術後の痛みが少なく、腸の運動の回復が早いといわれています。

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図2:開腹手術と腹腔鏡下手術の手術創の違い

腹腔鏡下手術は従来の開腹手術にくらべて難易度が高く、手術の所要時間も長くかかります。腹部手術既往ある方や胃癌が他の臓器に浸潤している場合は腹腔鏡での手術ができない場合もあります。手術をさせていただく中には、その時点ですでに他臓器への遠隔転移(腹膜転移、肝臓転移など)がある場合もあります。この場合は、抗癌剤治療が第1選択となります。患者さんそれぞれの病態に合わせて最善の治療を行っていくように努めています。

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 2020年10月からは腹腔鏡手術に加え、より正確で緻密な手術を可能にするために、最新式のロボット「ダビンチXi」による手術を導入しました(写真1)。ロボット手術では、術者が遠近感を得られる3次元映像を見ながら10倍の拡大視野で手術操作を行います。また、ロボットの操作アームは可動域が広く、術者の動きを忠実に遂行できため、より確実な手術操作が可能になります(図3)。
当院の導入期の治療成績を従来の腹腔鏡手術と比較すると、合併症が少なく術後在院日数が短い傾向が見られました(表1)。また、従来の腹腔鏡手術では困難であった胃上部癌に対する噴門側胃切除術後において、逆流性食道炎を予防するための再建法(観音開き法)も行えるようになりました(図4)。

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図4:観音開き法再建
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遠隔転移や広範囲な浸潤で切除不能とされた進行胃癌に対しては化学療法(抗癌剤)を行います。化学療法が有効で腫瘍が縮小し切除可能となった場合は、手術を行います。癌による胃の通過障害がある場合は、まず腹腔鏡下にバイパス術を行い、食事や抗癌剤の内服ができるようにした後に化学療法を行います。

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写真1:ロボット支援手術

食道癌治療の現況:

当院は食道外科専門医準認定施設であり、食道科認定医が治療に当たっています。食道癌に対する治療は食道癌治療ガイドラインに従い、臨床病期に応じて治療選択を行っています。臨床病期0の食道癌に対しては内視鏡的治療(消化器内科が担当)を行っています。Stage Iに対しては手術または放射線化学療法を選択します。Stage IIあるいはIIIの場合は術前化学療法を行った後に手術を行っています(図5)。食道癌による通過障害が原因で経口摂取ができない場合は手術を先行して行い、術後に化学療法を行うこともあります。
 当院では腫瘍内科(化学療法)や放射線科(放射線治療)、消化器内科(ステント治療)と協力して食道癌に対する治療を行っています。胃癌の手術と同様に食道癌に治しても胸腔鏡と腹腔鏡による手術を行っています(図6)。
 術後合併症の一つである縫合不全を回避するために、ICG蛍光色素を用いた再建臓器の血流評価を行っています。また、術中に神経刺激装置を用いて反回神経の同定やモニタリングをすることで、神経麻痺による嗄声や嚥下障害を予防しています(写真2)。

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図5:食道癌(Stage II, III)治療のアルゴリズム(食道癌治療ガイドライ2022年版)
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図6:胸腔鏡・腹腔鏡下食道亜全摘術後の創部
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写真2:ICG蛍光色素による再建胃管の血流評価(左)と神経刺激装置による反回神経の同定(右)。

上部消化管外科のトピックス

当院上部消化管外科最近のトピックスです。以下の項目をクリックしてご覧ください。

(文責:前山良)

(最終更新日:2024年4月1日)